登録免許税は登録免許税法という法律によって規律されるのが原則なのですが,実務においてはもう一つ「租税特別措置法」という別の法律を適用して,不動産取引の活性化,住宅取得者の負担軽減等を図るという観点から,いくつかの場面で減税措置が受けられるようになっています。
しかし,この法律は時限立法という形で有効期限を定めて制定されるため,およそ毎年度末ギリギリになって改正・公布されることが通例となっていて,その内容も複雑かつ難解で,本職でも六法を片手に毎度計算をし直さなくてはならないほど厄介なものとなっています。(※1)
この登録免許税の減税措置については,年を追う毎に段階的に縮小されて来ました。ここでは,不動産登記申請の場面でよく適用される主な条項をいくつかピックアップしてご紹介します。
●租税特別措置法第72条第1項第1号
個人または法人が,令和8年3月31日までの間に,土地に関する登記で次に
掲げるものを受ける場合の税率
売買による所有権移転の登記
1000分の15
●租税特別措置法第72条の2
個人が,令和9年3月31日までの間に,住宅用家屋(※2)を新築し,又は建
築後使用されたことのない住宅用家屋を取得し,当該個人の居住の用に供した
場合の税率
所有権保存の登記(新築・取得後1年以内に限る)
1000分の1.5
●租税特別措置法第73条
個人が,令和9年3月31日までの間に,建築後使用されたことのない住宅用
家屋(※2)又は建築後使用されたことのある住宅用家屋(※2)を取得(※3)し,
当該個人の居住の用に供した場合の税率
所有権移転の登記(取得後原則1年以内に限る)
1000分の3
●租税特別措置法第74条
個人が,令和9年3月31日までの間に,認定長期優良住宅で住宅用家屋(※
2)に該当するもの(特定認定長期優良住宅)の新築をし、又は建築後使用された
ことのない特定認定長期優良住宅の取得(※3)をし,当該個人の居住の用に供
した場合の税率
所有権保存の登記(新築、取得後原則1年以内に限る)
1000分の1
所有権移転の登記(取得後原則1年以内に限る)
1000分の1(一戸建ての特定認定長期優良住宅にあつては、1000分の2)
●租税特別措置法第74条の2
個人が,令和9年3月31日までの間に,低炭素建築物で住宅用家屋(※2)
に該当するもの(認定低炭素住宅)の新築をし、又は建築後使用されたことのな
い認定低炭素住宅の取得(※3)をし,当該個人の居住の用に供した場合の税率
所有権保存の登記(新築、取得後原則1年以内に限る)
1000分の1
所有権移転の登記(取得後原則1年以内に限る)
1000分の1
●租税特別措置法第74条の3
個人が,令和9年3月31日までの間に,宅地建物取引業者が増改築等をし
た建築後使用されたことのある住宅用家屋(※2)を当該宅地建物取引業者から
取得(※3)をし,当該個人の居住の用に供した場合の税率
所有権移転の登記(取得後原則1年以内に限る)
1000分の1
●租税特別措置法第75条
個人が,令和9年3月31日までの間に,住宅用家屋の新築(増築を含む)を
し,又は建築後使用されたことのない住宅用家屋(※2)若しくは建築後使用された
ことのある住宅用家屋(※2)の取得をし,当該個人の居住の用に供した場合に
おいて,新築又は取得をするための資金の貸付け(貸付けに係る債務の保証を
含む)が行われるとき又は対価の支払が賦払の方法により行われるときの税率
抵当権設定(※4)の登記(新築・取得後原則1年以内に限る)
1000分の1
●租税特別措置法第84条の2の3
個人が,相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地
の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の
移転の登記を受ける前に死亡したときは,令和7年3月31日までの間に当該個人を当
該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については, 登録免許税を課さない。
②個人が,令和7年3月31日までの間に,土地について所有権の 保存の登記(表題部
所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の 移転の登記を受ける
場合において,これらの登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産
の価額が 100万円以下であるときは,これらの登記については, 登録免許税を課さない。
- オンライン申請した場合の特別控除(租税特別措置法旧84条の5)は,平成25年3月31日をもって廃止されました。したがって、現在オンライン申請による減税メリットは不動産登記・商業登記ともまったくありません。
※1 司法書士試験でも,この租税特別措置法の減税条項は問われません。登録
免許税の計算に当たっては,あくまでも本則である登録免許税法を充分に理
解しておく必要があります。(登録免許税法中の減税条項,例えば第13条第
2項等は理解が必要です。)
※2 住宅用家屋に該当するか否かは,当該家屋が所在する市町村長(特別区の
区長を含む)が「住宅用家屋証明書」を発行することによって判断されます。
※3 この取得には,売買の他に競落を含みます。(租税特別措置法施行令第42
条第3項)
※4 根抵当権設定は含みません。
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